平安時代の名だたる歌人、和泉式部。彼女は、恋に情熱を注いだ女性として知られ、その生涯を描いた『和泉式部日記』には、波乱万丈な恋模様が詳細に記されています。2024年の大河ドラマ「光る君へ」では、泉里香さんがこの恋多き女性、和泉式部を演じ、その魅力を存分に発揮しています。この記事では、和泉式部の生涯を振り返りつつ、『和泉式部日記』に描かれた恋愛模様や、その背景に迫ります。

和泉式部の波乱の恋愛遍歴

和泉式部は、平安時代後期の女性歌人で、父は大江雅致、母は藤原氏出身の女性とされています。彼女は若くして越前守橘道貞と結婚し、一女・小式部内侍をもうけます。しかし、彼女の人生はこの結婚だけでは終わりません。

和泉式部はその後、霊元天皇の第三皇子である為尊親王との恋愛に発展します。しかし、為尊親王との恋は身分差もあり、スキャンダルとして宮中で噂されました。この関係は、父親からの感動（勘当）という形で家庭内にも影響を及ぼしました。

さらなる悲劇は、為尊親王がわずか26歳の若さで疫病により亡くなったことです。和泉式部はこの出来事に深い悲しみに沈みました。しかし、その悲しみも癒えないうちに、為尊親王の弟である敦道親王から熱烈なアプローチを受けることになります。

『和泉式部日記』に描かれた恋愛模様

和泉式部の日記は、為尊親王の死後に敦道親王との恋愛が展開する様子を描いています。彼女と敦道親王の間で交わされる和歌や手紙には、平安時代の宮廷文化に根ざした優美なやり取りが繰り広げられ、恋愛に苦しみながらもその情熱に正直に生きる和泉式部の姿が記録されています。

たとえば、敦道親王が和泉式部に宛てて贈った歌には「兄と同じ声を持つ私を、あなたは見逃していませんか？」という恋心を表す内容があり、それに対して和泉式部は「亡き兄を偲ぶよりも、あなたの声を直接聞きたい」と答えています。このようなやりとりから、二人の恋は急速に深まっていきました。

宮中での評判と世間の目

和泉式部はその美貌と才能で多くの男性を魅了しましたが、その反面、彼女の恋愛遍歴は宮中でも物議を醸しました。敦道親王との関係は特に注目を集め、周囲からの反対にもかかわらず、彼女は敦道親王のもとに嫁ぎました。後に敦道親王の正妻が家を出ることとなり、和泉式部は正式に彼の側室として宮廷に入りました。

一方で、和泉式部の恋多き性格は多くの批判を呼びました。彼女は宮中での生活の中で複数の男性から求愛されましたが、その全てに応じるわけではなく、特に敦道親王との恋愛に心を注ぎました。彼女はまた、恋愛の辛さや喜びを和歌に詠み、その才能をいかんなく発揮しました。

母として、歌人としての和泉式部

和泉式部は単に恋愛の歌人であっただけでなく、母としてもその名を残しています。彼女の娘である小式部内侍もまた、優れた歌人として知られています。小式部内侍は母と同じく若くして宮廷に仕え、その才能を発揮しました。特に、有名な歌会で藤原定頼に即興で詠んだ歌「大江山 いく野の道の遠ければ まだふみも見ず 天の橋立」が百人一首に選ばれ、彼女の名は後世に語り継がれています。

和泉式部の恋の歌は、その生涯を象徴するかのように、情熱と悲しみが織り交ぜられています。彼女は多くの男性との恋愛を経て、その経験を和歌という形で表現し続けました。和泉式部が愛することの苦しみと歓喜を歌に託したことで、彼女の作品は千年を超えて現代にまで受け継がれています。