道長(柄本佑)が倒れたという知らせが広がると、内裏には不安が渦巻き始めた。長きにわたって朝廷を掌握してきた道長の健康が揺らぎ、彼の不在による混乱が、内裏を少しずつ蝕んでいくのが誰の目にも明らかだった。彼の存在がもたらしてきた安定の代償が今、道長の肉体に重くのしかかっているようだった。
一方、源氏物語を書き終えたまひろ(吉高由里子)は、道長の容体が思わしくないと聞き、胸に微かな痛みを感じていた。まひろの心には、物語の完結による達成感と共に、どこか空虚さが残されていた。
「書くべきことがもうないならば、いっそこのまま出家してしまおうかしら」と呟くまひろに、周囲は驚きと戸惑いの表情を見せた。源氏物語が人々の心を映し続けていたように、まひろの存在もまた、彼女を取り巻く人々にとって大きな支えであった。特に中宮彰子は「母上が書かれないなんて、母上でないように感じます」と悲しげに言葉を漏らした。
病床の道長は、かつての力強さを失い、周囲の者たちと接する機会も減っていった。道長の目に映るものは、忠誠を誓う側近の姿でさえも、遠く感じられるようだった。「もはや誰のことも信じられぬ。己のことさえも。」道長がまひろに告げたその言葉は、彼の心の奥底に横たわる孤独と虚無を垣間見せた。
まひろは彼の言葉に胸を締め付けられた。繁栄を手に入れた代償が、彼に孤独をもたらしたという事実は、彼女にとっても苦痛だった。
時折、道長はまひろと共に、源氏物語に登場する「光る君」の話を語り合った。その物語の中で描かれる光る君の優雅な姿とその輝きは、道長にとっても一つの理想であり、また苦悩の象徴でもあった。「光る君が去り、その輝きを受け継ぐ者はいないのでしょうか?」とまひろが静かに語りかけた。
道長は薄く目を閉じ、その問いに返事をすることはなかった。彼にとって、光る君は自らが追い求めた理想の姿であり、誰もが手に入れられない儚い夢だったのかもしれない。まひろはその横顔を見つめ、道長が抱える重荷に対する敬意と哀しみを感じていた。
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