紫式部が『源氏物語』の物語展開を変える決断をしたのは、彼女が仕えた明子(しょうし)の深い悲しみが背景にありました。明子は、最愛の一条天皇が急逝したことで心の支えを失い、出家を考えるほどの絶望に包まれました。式部はそんな彼女を慰めるため、光源氏の物語を描きながら現実の出来事に重ね合わせ、少しでも心の安らぎを提供することを意図したとされています。
式部が描いたのは、光源氏が紫の上の死を悲しむ姿でした。現実の明子が天皇を失った痛みと重ね合わせるかのように、光源氏もまた、最愛の人を失う絶望に沈みます。
紫式部は、明子が未来に希望を持てるように、光源氏の死後も続く新たな物語を構築していきました。次世代の物語として登場するのは、光源氏の息子である薫と匂宮です。薫はその出生の秘密に苦しみ、仏道に傾倒する姿が描かれ、式部の仏教思想が反映されています。こうして次世代に焦点を移し、現実の明子にも二人の王子の母として前を向くよう励ましたと考えられます。
式部は、光源氏の物語を終わらせるため、『幻』という巻で彼の死を暗示しました。ここでは、光源氏が紫の上の死を嘆きながら一年の四季を過ごし、その後出家を決意する様子が描かれています。
薫と匂宮は、物語の新しい主人公として登場し、彼らの恋愛模様や苦悩が描かれます。薫は、父である光源氏から引き継がれた品格と深い仏教的な思想を持ち、匂宮は華やかな社交性とともに現実の王子たちの未来を象徴する存在です。こうして、物語の舞台は新しい世代に移り、次世代の物語を通じて明子に未来の希望を抱かせようとする意図が感じられます。
『源氏物語』は、最後の巻『夢の浮橋』で終わりを迎えます。ここでは、薫が愛する浮舟が仏道に入り、二人の思いが交わることのないまま物語が幕を閉じます。
この結末には、紫式部自身の男性観や人間関係への複雑な感情が反映されているとされ、薫と浮舟の切ない関係は一条天皇を失った明子が天皇への未練を抱きながらも前へ進む姿を象徴していると考えられます。
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