藤原惟規の幼少期：姉・紫式部との逸話

藤原惟規（ふじわらのこれのり）は、紫式部の同母兄弟として知られる人物で、その生涯は失敗や困難が多く、姉である紫式部の影に隠れがちです。彼の幼少期について語るとき、必ずと言っていいほど登場するのが「漢文学習の逸話」です。

惟規が幼少の頃、父親が彼に漢文を教えようとしましたが、惟規はどうしても覚えることができませんでした。それに対し、隣で聞いていた姉の紫式部がすぐにすべてを覚えてしまい、父親は「お前が男だったらよかったのに」と惟規に向かって言ったという話です。この逸話は、紫式部の日記に書かれているもので、惟規の無能さを強調するものとして広く知られていますが、これはあくまで姉の視点から見た彼の姿であり、必ずしも実像を反映しているわけではありません。

朝廷での役人としての惟規

惟規は成長後、朝廷の役人として仕えました。しかし、彼の役人としての評価はあまり高くはなく、失敗談が多く語り継がれています。特に、彼が「中書舎人」という役職に就いていた時のことが知られています。中書舎人は、天皇の詔勅や命令を書き記す重要な役職であり、責任の重い役割を担っていましたが、惟規はこの職務においても失敗を繰り返していたようです。

一例として、彼が天皇の詔勅を届けるという非常に重要な任務を任された際、道中で酔っ払い、正しい礼を尽くさなかったという出来事があります。この失態により、彼は多くの人々から非難を浴び、評判を大きく落としました。また、宮中での儀式において物を分配する役目を持っていた際にも、一人一人に丁寧に配るべきところを、一度に大量の物を置いてしまい、人々が奪い合うという混乱を引き起こしました。このような失敗が重なり、惟規は周囲から「礼儀知らず」として認識されることが多かったのです。

恋愛と困難：中条の君との関係

藤原惟規の人生には、失敗だけでなく恋愛に関するエピソードもあります。彼は中条の君という女性と恋愛関係にありましたが、その恋愛は順調ではなく、彼が親族の助けを借りて問題を解決するという状況に陥りました。この恋愛における困難は、惟規の人生においても大きな転機となった出来事の一つです。

この恋愛の詳細は多く残されていませんが、彼が恋人である中条の君に対して強い思いを抱いていたことは確かです。惟規の人生が終わりに近づくにつれて、この愛情はさらに深まっていったと考えられます。

惟規の晩年：越後での病と臨終

藤原惟規の晩年は、越後に赴いた後、病に倒れたことが大きな節目となります。彼はこの病が重く、すぐに回復の見込みがないほどの状態に陥りました。臨終を迎える際、彼は僧侶から出家を勧められましたが、彼はその誘いに対して「紅葉や松虫の音があれば、それで十分慰められるから出家しなくてもよい」と冗談交じりに答えたとされています。

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