中宮さまは常にその娘、恐怖と対峙しなければならない。特に大人の男性に対する恐れは、彼女の心を重く圧迫していた。中宮さまがこの恐怖を抱くようになったのは、彼女の父、道長との関係が大きく影響している。
道長は、当時の貴族社会で最も権力を持つ人物の一人であり、その風格と威圧感は誰もが畏怖するものだった。彼の目は厳しく、声のトーン一つで周りが静まり返るほどだった。中宮さまは、小さな頃からそんな父の姿を見て育ち、自然と大人の男性、特に権力を持つ男性に対する恐れを抱くようになったのだ。
父としての道長は厳格であり、優しさを見せることはほとんどなかった。彼の教育は絶え間なく中宮さまに対する期待を含んでおり、それが余計なプレッシャーとなって彼女の心を圧迫した。
年長の帝との関係でも、道長の存在が常に間に立ち、中宮さまは帝に対しても自然体で接することができなかった。帝の厳粛な存在感は、父に対する恐怖をさらに煽る結果となった。
一方で、中宮さまは藤式部や殿御といった比較的親しみやすい人物たちとの交流に心を開いていた。藤式部は道長とは異なり、優しさと理解を持って中宮さまに接していた。彼の計らいで、殿御と共に歓談している様子を見ることができた際の中宮さまの表情は、普段の緊張が解けた純粋な驚きと喜びに満ちていた。これは彼女にとって大変新鮮な体験だった。
源氏物語を通じて、中宮さまはさまざまな感情や人間関係を知ることができた。特に「寵愛した妃の死」の章は、帝にとっても深い感動を与えた部分であり、中宮さま自身も物語の中で父道長とは異なる形の愛情を見出すことができた。源氏物語の中の人物たちは、父道長の影響から逃れられない現実とは裏腹に、中宮さまにとって心の慰めを提供していた。
時が過ぎるにつれて、中宮さまの中にあった恐怖は少しずつではあるが癒されていった。そして、父親である道長に対しても、怒りや悲しみを超えた感情を持って向き合うことができるようになった。初めて藤式部に父道長の話をする際、彼女は「悲しみ」や「怒り」よりも、「誠に素晴らしき人であった」という言葉を選んだ。それは、父への複雑な感情が、時間と共に新たな形で昇華された証拠でもある。
親子の問題は深く、多くの子を苦しめる原因となるが、中宮さまの話は多くの人にとって共感を呼ぶものであり、その成長と変化を通じて親子間の新たな関係を築く道を示してくれる。こうした物語が、困難な環境でも前に進む力を与えることは間違いない。
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