1965年のお正月、家族団らんの一コマがカメラに収められました。その瞬間、姉だけがカメラを見つめている姿が印象的です。白黒写真に映るその懐かしい笑顔は、時を経て、今や色鮮やかなカラー化によって、さらに蘇ります。
1月2日、父と兄は京都から母の実家へ直行し、そこで家族4人で数日を過ごしました。4日の昼頃、彼らは自宅に戻り、そこでさらに特別なゲストを迎えることに。母方のいとこであるお姉ちゃんが、一人で1時間以上かけてバスを乗り継ぎ、遠く西脇まで訪ねてきてくれたのです。この訪問は、家族にとって新しい年の特別な思い出となりました。
当時の彼女はまだ中学生。慣れない場所での一人旅、それだけでも十分に勇気のいることです。
映画館で映画を見たり、商店街を歩いて買い物を楽しんだりするのが、彼女の一番の楽しみだったようです。今となっては、その西脇の商店街も映画館も消え去ってしまったかもしれませんが、当時の華やかな雰囲気が家族の思い出として心に残っているのです。
そして、1月4日。家族全員が揃い、家の中に温かい笑い声が響き渡ります。母は台所で忙しく立ち働き、父は新聞を片手にリビングでくつろぎ、姉と兄はいとこと楽しそうに話をしていたことでしょう。カメラが向けられると、姉だけがそのレンズに反応し、まっすぐな視線を送ります。
5日にはいとこが再びバスに乗り、賑やかな一日を終え、静かな日常へと戻ります。しかし、その数日間の思い出は、ただの正月休み以上のものでした。家族全員が一堂に会し、久しぶりに集まった親戚と過ごす時間は、特別でかけがえのないもの。6日からは両親が仕事に戻り、またいつもの日々が始まりますが、その短い休息は彼らの心に深く刻まれたのです。
家族の中で、これほどまでに思い出深いお正月を過ごすことができたのは、ひとえに家族の絆があったからでしょう。日常から離れ、親戚との交流や西脇の街での買い物といった小さな冒険が、彼らの心に永遠の記憶として残ることになったのです。
この時代の家族旅行や親戚との交流は、現代に比べてずっとシンプルでありながらも、特別なものとして捉えられていました。移動も今ほど便利ではなく、バスや電車を乗り継いでの長旅は、今では考えられないほどの冒険でした。そんな中で、たった数日でも親戚と顔を合わせ、一緒に笑い合い、時間を共有することは、何よりも価値のあるものでした。
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