観光8年、一条天皇が32歳の若さで崩御した。この出来事には、いまだに解明されていない4つの謎が残されている。天皇の死を巡るこれらの謎は、当時の権力闘争や人間関係を象徴する重要なポイントである。
一条天皇は5月に重い病に倒れたものの、25日には一度回復した。しかし翌日、突然自身の死を予感し、上位(退位)を決意することとなる。彼はその後約1か月後に亡くなってしまった。
ここで注目すべきは、回復していたにもかかわらず突然死を覚悟したという点だ。32歳という若さでの崩御は不自然に感じられる。確かに天皇は病で亡くなったが、彼の死を決定づけた精神的な要因が存在していた可能性がある。その要因として挙げられるのが、藤原道長が依頼した大江野正平による「占い」である。
この占いは、過去に第5天皇や村上天皇が亡くなった際にも同じ結果が出たもので、天皇の命運を占った内容は避けられない運命を告げるものだった。占いの結果を知った道長は涙を流し、その様子を一条天皇が偶然目撃してしまう。これによって、天皇は自分もこの病で命を落とすのだと悟ったと言われている。
天皇はこの占いの結果を非常に重く受け止め、精神的に追い詰められたことで病状が急速に悪化した可能性が高い。当時の政治において占いは非常に重要な役割を果たしており、天皇にとっても占いの結果は現実と同様に受け入れざるを得ないものであった。
二つ目の謎は、一条天皇の中宮であった彰子が、父である藤原道長に対して強い不満を抱いたという点だ。天皇は上位の意思を一度保留したものの、5月27日には再びその意思を固め、次期天皇の候補として敦康親王を指名したとされる。しかし、この重要な知らせが中宮・彰子に伝わらなかったことから、彼女は自分が疎外されたと感じ、道長に対して強い不満を抱いた。
この出来事の背景には、次期天皇を巡る父と娘の意見対立があった。道長は自分の孫である敦成親王を次期天皇に据えたいと考えていたが、彰子は一条天皇の意向を重視し、第一王子である敦康親王を推していたとされる。この父娘の対立が、彰子の父に対する不満を引き起こす原因となった。
彰子は、一条天皇の寵愛を十分に得られず、孤独な時期を過ごしていたが、その時期を敦康親王と共に過ごしており、彼を深く愛していたと考えられる。そのため、父・道長が敦成親王を推すことに対して強く反発した可能性が高い。
三つ目の謎は、一条天皇が亡くなる前夜に詠んだ和歌の意味と、その「君」が誰を指しているのかという点である。
天皇が残した和歌は、「露の身の風の宿りに君を置きて、塵を出でぬることぞ悲しき」というもので、人の命が露のようにはかなく、風に吹かれて消えてしまう無情さの中で、君を残して自分だけが先に逝ってしまうことが悲しい、という意味を持つ。
この「君」が誰を指しているのかについては諸説ある。藤原雪成の日記では、この歌が亡き皇后・貞子に向けられたものであるとされている。しかし、『栄花物語』や鎌倉時代の『新古今和歌集』では、君を中宮・彰子と解釈する説もある。また、敦康親王に向けた歌であった可能性も考えられている。
どの解釈が正しいのかは今も議論が続いており、天皇の心の中で誰に向けた思いだったのかは、未だに謎のままである。
四つ目の謎は、一条天皇の葬儀に関するものである。生前、天皇は土葬を希望していたとされるが、藤原道長はその願いを無視し、天皇を火葬にした。道長がこの土葬の願いをなぜ無視したのか、その理由ははっきりしていない。
道長が天皇の願いを故意に無視した可能性もある。天皇の土葬を避けた理由の一つとして、貞子と同じ形で葬られることを避けたかったという説がある。また、一条天皇を火葬にすることで、道長は迅速に新たな時代を切り開こうとしたのではないかと考えられる。
天皇の葬儀に関する決定は、道長がいかにして権力を握り、新たな時代への移行を急いでいたかを示すものであり、この行動の背景には、道長が抱えていた焦りや不安があったのではないかという見方がある。
NHKの大河ドラマ「光る君へ」第40回では、この一条天皇の最期が描かれた。病に倒れた天皇は、明子の前では苦しみを隠しつつも、心の中で運命を受け入れようとしていた。藤原道長は、大江野正平による占いを依頼し、その結果を見て涙を流すが、天皇はその様子を目撃し、自らの死を覚悟する。
塩野さんが演じる一条天皇は、感情豊かで心温かい人物として描かれ、道長との対立や宮中での葛藤を繊細に表現している。彼が命運を悟り、上位を決断する場面では、次期天皇の選択が迫る中での苦悩が深く描かれている。
特に、敦康親王を次期天皇に据えたいという願いが叶わず、失望に満ちた表情が印象的だった。
ドラマの中では、道長の策略が強調され、天皇を取り巻く権力争いが鮮明に描かれている。
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