「光る君へ」第30回では、賢子(まひろ)の人生が新たな転機を迎えると共に、激動の出来事が続きます。夫・藤原道長との絆が揺れ動く中で、家族や周囲の人々との関係も複雑に絡み合っていく様子が描かれます。
観光元年(1004年)の夏、都は深刻な干ばつに襲われます。井戸が枯れ、水不足によって多くの人々が命の危険にさらされ、都全体が疲弊していました。そんな中、当時の一条天皇は自ら雨乞いを行い、200年ぶりの天皇による祈りの儀式が実施されました。
一方で、藤原道長も安倍晴明の助けを借りて、都に雨をもたらそうと必死に祈ります。道長は晴明に「命を10年差し出す」とまで誓い、命がけで都の平安を取り戻そうとする姿は圧巻です。最終的に祈りが実を結び、都に恵みの雨が降り注ぎ、人々は歓喜に包まれました。
物語は、藤原道長の妻・賢子が主催する「若を学ぶ会」での出来事に焦点が移ります。賢子が指導する中で、ある女性が登場します。彼女は後に「和泉式部」と呼ばれることになる人物です。この和泉式部は、当時、自由奔放な恋愛関係で知られ、後に東宮の弟・敦道親王との熱愛でさらに注目を集めることになります。賢子が彼女と出会い、文学や詩を通じて心を通わせていく過程は、物語の大きなポイントとなります。
また、賢子が執筆していた「傘語り」という物語も重要な役割を果たします。賢子は日常の中で見聞きしたことを基に、物語を作り上げていきます。彼女の女房たちはその語りに魅了され、賢子自身もその反応に喜びを感じていました。しかし、これが後に悲劇を招くことになります。
一条天皇は、亡き藤原貞子を深く想い続けていました。貞子が死去して4年が経つも、天皇の心は依然として彼女のことを忘れられませんでした。
天皇は貞子が残した枕の相子を繰り返し読み返し、そのたびに彼女の面影に涙を流すのです。
藤原道長の助けを借りて、一条天皇は貞子の思い出を胸に抱きながらも、次第にその感情を整理していく様子が描かれます。彼の心の葛藤と、貞子への未練が物語の中心に据えられ、視聴者の心を揺さぶります。
賢子の物語は、ある悲劇によって急展開を迎えます。彼女が大切に書き留めていた「傘語り」の原稿が、娘・カコのいたずらによって炎に包まれてしまうのです。カコは母親の注意を引くために遊んでほしいとせがみますが、執筆中の賢子はそれに応じられません。やがて怒ったカコが火を使い、賢子の原稿を燃やしてしまいます。
この出来事に賢子は激怒し、娘を厳しく叱りつけます。「自分の思い通りにならないからと言って、髪を燃やすなど人のやることではない」と、涙ながらに叱る賢子の姿は、視聴者にとっても痛ましいシーンです。大切にしていた物語を全て失ってしまった彼女のショックは計り知れず、賢子の心に深い傷が残ります。
物語の最後には、藤原道長が変装して賢子のもとを訪れるシーンが描かれます。道長は自らの心の迷いを晴らすため、賢子と向き合おうとします。彼の訪問が、今後の物語にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。
第30話は、賢子の内面的な葛藤や家族との絆を描きながら、激動の展開を迎えるエピソードとなっています。物語は大きな転機を迎え、今後の展開がますます楽しみになることでしょう。