昭和53年、私が2歳の頃、初めて親族の結婚式に参加しました。結婚したのは母の妹、つまり私の叔母で、当時の式の雰囲気は現代とは異なるものでした。式場に足を踏み入れた瞬間、私は子供ながらにその空気の重みを感じたのを今でも覚えています。あの時代には、今ではなかなか見られない独特の風習や伝統が色濃く残っており、特に新郎新婦の入場シーンは一際印象的でした。
現代では、結婚式といえば新郎新婦が華やかな音楽に合わせて入場するのが主流ですが、昭和の結婚式には今とは異なる伝統的な要素がたくさん取り入れられていました。叔母の結婚式でも、新郎新婦は家紋入りの提灯を持って入場しました。この提灯は、まるで二人の未来を照らすかのように光を放ち、厳かな雰囲気を醸し出していました。現代ではなかなか目にすることのない光景で、子供ながらにその光景に引き込まれたことをよく覚えています。
この提灯は、おそらく結婚式のために特別に用意されたものだったのでしょう。
家紋がしっかりと刻まれた提灯を見て、祖父母や親戚たちがその準備にどれだけ心を込めたのか、容易に想像できます。単なる飾りではなく、家族の誇りや伝統を象徴するものであり、式場全体に厳粛な空気をもたらしていました。
式が進むにつれ、親戚たちも次々と集まり、祝いの席はますます賑やかになりました。当時の結婚式は、家族同士が結びつき、地域全体が二人の門出を祝う場でもありました。現代の結婚式が個人のものだとすれば、昭和の結婚式は「家族の絆」を強調するものであり、その温かみを感じさせるものでした。
この提灯の持つ意味について、母や親戚に聞いてみたところ、提灯は家の光を象徴し、新郎新婦の未来を明るく照らすという意味が込められているとのことでした。今ではほとんど見ることがなくなったこの風習ですが、当時は非常に重要視されていたようです。提灯に家紋が入っていることも、家族の誇りや伝統を守る象徴として非常に大切な意味を持っていたのだと考えられます。
また、この提灯を持って入場するのは、新郎新婦だけではなく、親族の中でも特に地位の高い人物が担当することが多かったとのこと。叔母の結婚式でも、祖父が提灯を持って入場し、その姿は非常に威厳がありました。
祖父が家族の未来を背負い、厳かな表情で提灯を持つ姿は、今でも心に残っています。
そして、式の最後には、親族や友人たちが次々と新郎新婦を祝福しました。今では、写真や動画で簡単に記録できる時代ですが、当時は一枚一枚の写真が非常に貴重で、特に結婚式の写真は家族の宝物として大切にされていました。この写真も、その一つです。提灯を持って入場するシーンを捉えた一枚は、時を超えて当時の厳かさや温かさを感じさせてくれます。
このような伝統的な結婚式の風習が失われつつある中で、私たちがこうして古い写真を見返すことで、当時の風習や家族の絆を再確認することができるのは、非常に貴重なことです。今の時代では、結婚式はよりカジュアルになり、自由なスタイルが増えていますが、昭和の結婚式にはその時代ならではの「重み」や「深い意味」が込められていました。
この写真を見返すたびに、あの時の厳かで温かい雰囲気が蘇ります。提灯の光に包まれた新郎新婦の姿は、まるで未来の幸福を祝福するかのようであり、その背後にある家族の絆や伝統が強く感じられました。
私たちが今こうして結婚式の写真を振り返ることができるのは、当時の人々が一瞬一瞬を大切に記録し、家族の歴史として受け継いできたからこそです。
この提灯の入場シーンは、ただの結婚式の一場面ではなく、家族の歴史の一部であり、その重みを感じることができる大切な記憶です。
時代は変わり、結婚式のスタイルも進化していきますが、こうした古き良き風習や伝統は、私たちの心に深く刻まれ、これからも大切に受け継いでいきたいものです。