久しぶりに家に帰ってきた航一が、朋一と激しい議論を交わしていた。東京大学で起きた安田行動事件について話し合っていた二人は、まるで火花が散るかのように言い争っていた。航一は、最近の最高裁の判決に対して深い不満を抱いており、それを朋一にぶつけていたのだ。
「裁判官はただ黙って従うべきなのか?」と航一は苛立ちを隠せない。これに対して朋一は冷静に反論する。「裁判官は法に基づいて判断を下すべきであり、政治的に偏ってはならない」と。
その様子を見守っていた寅子は、この議論がただの口論で終わらないことを直感していた。
その晩、寅子は晩酌をしていたが、どこか心の片隅で不安を感じていた。そんな中、一人黙り込んでいる優未が気になっていた。彼女の表情には何か重いものがある。優未は何かを抱え込み、誰にも相談できずに悩んでいるようだった。
優未がついに口を開こうとした瞬間だった。部屋に入ってきた朋一が、突然話を遮った。「寅子さん、のどかが部屋に来た。来週、彼女の恋人が来るそうだ。」
その言葉に寅子は一瞬驚きを隠せなかった。
朋一の言葉をきっかけに、のどかが隠していた秘密が明らかになった。彼女には絵描きの恋人がいたのだ。しかも、彼らは来年までに彼が成功しなければ結婚するという約束をしていた。
航一がこの事実を打ち明けた理由は、一体何だったのか。妹の結婚について心配する兄として、黙っていられなかったのかもしれない。
一方、翌日には大きな政治的動きがあった。与党の政治団体の幹事長が、最高裁の判決に対して偏りがあると批判し、特別調査委員会の設置を記者会見で発表したのだ。司法の独立が揺るがされるかもしれないという危機感が政界全体に広がりつつあった。
桂はすぐに最高裁判事たちを集めて会議を開き、「法の手続きに従うべきだ。人事介入など言語道断だ!」と断固とした態度を示した。彼の決意により、調査委員会の設立は一時的に棚上げされたが、この問題が終わったわけではなかった。むしろ、さらなる政治的圧力がかかる予兆を感じさせた。
その夜、再び家族の間には不穏な空気が漂っていた。寅子が晩酌を続けていると、優未が静かに近づいてきた。「お母さん、私も一杯もらっていい?」優未はそう言って、グラスに手を伸ばした。
いつもは明るく、どこか無邪気な優未が、この日はどこか違っていた。
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