寅子は、裁判官として、母として、妻として、多くの役割を背負いながらも、これまで数々の問題を乗り越えてきました。しかし、今回の物語では、彼女自身が直面する問題がより個人的で、感情的なものへと発展していきます。
物語の冒頭、夫の高一がある事件をきっかけに、法の解釈の変更を訴えます。彼は真剣な表情で、桂庭長官に対して法改正の必要性を主張するものの、桂庭はそれを受け入れません。普段冷静な高一ですが、この場面では自分の信念を貫こうとするあまり、感情が爆発し、桂庭に強く反論します。緊張が高まり、高一はついに鼻血を出して倒れてしまうのです。その光景を目の当たりにした寅子は、動揺しつつも夫を支えるために奔走します。
寅子が過去と向き合わざるを得なくなるのは、新潟で知り合った森口美佐江に関する衝撃的な事実が明らかになったことがきっかけでした。美佐江は、寅子が幼少期に出会った人物であり、彼女の母が遺した手帳が今回の物語の中心となります。聖子がその手帳を寅子に手渡すと、そこに書かれていた内容が寅子の心を激しく揺さぶります。
「もし、あの時あの人を拒んでいなければ、今の自分はどうなっていたのだろう?」と、寅子は過去の選択に思いを馳せます。美佐江との関係、そして彼女との思い出が鮮明に蘇り、寅子は自分の人生に対して大きな後悔と絶望を感じ始めます。しかし、過去を変えることはできず、寅子はその重荷を抱えながらも前進しなければならないという現実に打ちひしがれます。
同時に、寅子の周囲では、彼女の仲間たちもまた新たな局面を迎えていました。寅子の息子・友和は、裁判官の職を辞めるという人生の大きな決断を下します。彼は、仕事に対する強い責任感と家庭とのバランスに苦しんでおり、その結果として離婚に至ります。この選択は、彼の人生にとって大きなターニングポイントとなるのです。
一方で、寅子の友人である良子は、司法試験に合格し、自分自身の道を切り開こうとしています。良子はかつて「不幸な存在」と見られていましたが、彼女は自分の力で未来を選び取る決意を持ち続け、ついに試験に合格したのです。
良子の強い意志と自立心は、寅子にとっても励ましとなり、彼女が自身の人生に対して新たな希望を抱くきっかけとなります。
良子は司法試験の合格を通じて、世間の目に翻弄されることなく、自分の力で未来を切り開くことの重要性を証明しました。彼女の選択は、家柄や過去の出来事に縛られることなく、自己決定権を取り戻すための大きな一歩だったのです。良子の成長と決断は、寅子にとっても深い意味を持ち、彼女自身の生き方を見つめ直すきっかけとなります。
第125話では、寅子が自身の過去に深く向き合う場面が多く描かれます。森口美佐江が遺した手帳には、寅子が幼い頃に体験した出来事が詳細に記されており、その内容は彼女にとって非常に重いものでした。手帳を通じて明らかになるのは、寅子があの時、何かを選ばなければならなかったという事実です。もし、あの時に別の選択をしていたら、今の彼女の人生はどうなっていたのか——そんな思いが彼女を絶望の淵へと追い込みます。
しかし、過去を変えることはできません。寅子は、手帳に書かれた内容と向き合いながらも、今の自分ができることを見つけ出そうと努力します。彼女は、過去の選択に対する後悔を抱えながらも、家族や仲間の支えを受け、未来への新たな一歩を踏み出そうとします。